東北芸術文化学会

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前会長 斎藤 稔 氏に瑞宝中綬章(23年春)

齋藤 瑞宝中綬章 功績概要(平成23年春の叙勲)

 

 

 

 

齋藤  広島大学名誉教授 広島市立大学名誉教授

専門分野西洋美術史、芸術学、比較芸術学、比較文化学

 

 

主な功績

 
(総評) 同人は長年にわたり西洋美術史と芸術学の研究に当たり、それに基づいて比較芸術学および比較文化学の確立のための研究に取り組み、以下の功績をあげるなど、我が国の美術史学と芸術学の全般的な発展に多大な貢献をした。

 

 

功績概要


1 西洋美術史と芸術学における価値の役割と機能に関する研究

      従来の研究では、西洋美術史と芸術学が価値関係的にあることはたびたび主張されてきたが、具体相における解明とその基礎付けはなされていなかった。

      昭和47年に研究留学(ドイツ政府アレキサンダー・フォン・フンボルト基金による)したミュンヘン大学の故ハンス・ゼードルマイヤ教授のもとで、その独自の方法である構造分析による作品解釈の芸術学の方法を探究して、作品の価値とその機能を解明し、その不可欠性を立証するとともに、その意義と役割によるその方法の適用と作用をもって多くの美術作品に応用して学術的に貢献した。

      その成果は同人の多くの論文や著書に個別的に見られるが、とくに著書、『美と知の饗宴―アルス(芸術)の真実を観る―』および博士論文の公刊である『人文学としてのアルス ―西洋における人文主義的藝術の系譜―』では美術史研究における人文学の基礎的な研究に基づく方法と理論を探究して、新たな芸術学の方位を提示した。


2 比較芸術学および比較文化学の探究と確立に関する研究

      従来、美術史の作品分析や解釈に関する研究はその図像学(イコノグラフィー)の方法から多くは歴史的な図像学や様式論に追随していた。

      同人は自らその限界を自覚し、そこに体系的な方法として新たな芸術学の援用を試み、それはほどなく、国内外の研究者による共同研究として推進された国際的な『比較芸術学の共同研究』(全6巻、美術出版社、1973~1988) および同じく『芸術学研究双書』(全4巻、玉川大学出版部、1989~1995)に示されている。

      この共同研究は国内外に類似の協力を促し、造形芸術をはじめ諸芸術の国際的共同研究を活性化させた。それらによって造形芸術は他の諸芸術とともに広く文化学として、必然的に比較文化学として把握されて芸術文化の諸研究に大きな貢献を果たした。


3 芸術文化の比較学に基づく芸術学的認識とその応用学的研究

        比較芸術学および比較文化学の観点から過去の芸術作品を改めて再評価するとともに、人間生活への善美の役割、平和や和合の祈願の表象などの追究に寄与している。

        その視点に立ってみると、造形芸術は古くから社会的文化として、環境的芸術として形成されていて、また市民社会の安寧や充足への作用などの追究に寄与している。

        また、都市形成を含むヒューマン・エコシステムの基本的な要件として役立ってきたことなど、今日的なエコロジーをも取り込む重要な学術的貢献を果たしている。  

        その応用は同人の志向的な働きによって設立された広島芸術学会、東北芸術文化学会、アルス・ウナ芸術学会の社会的な学術的活動に生かされて、それら学会は後進に引き継がれて今なお、とくに各地域の芸術文化の向上に貢献している。 

  

 

 

功績概要(齋藤稔)の中の用語の説明


構造分析(Strukturanalyse);美術作品の形式的要素と内容的要素を綿密に分析し、両者の綜合化によってえられる価値的な要素を抽出することに目標をおく。ハンス・ゼードルマイヤの作品解釈学の方法、1930年代に提起されて、第二次大戦後に広がる。


比較芸術学;美術史研究を基礎にしながら作品間の表現の形式や内容の吟味検証によって歴史的関係のみでなく、それを超えて関連する精神的な文化的要件を追究する学科。


ヒューマン・エコシステム;人間主義的なエコロジー(生態論、または環境論)による社会的なシステム、あるいは制度として承認されるあるべき仕方、または存在方式。



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