東北芸術文化学会

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第74回弘前研究例会のご報告


東北芸術文化学会第74回弘前研究例会のご報告


東北芸術文化学会 会長 蝦名敦子 氏


 本研究例会は、まだ雪が積もる3月初旬に弘前で行われた。全部で8件の口頭発表があり、短い時間であったが、質疑応答も活発に行われ盛況であった。
 発表内容としては、前半4件は図工・美術教育に関してで、学習指導要領の改訂に一早く着目した最新の教育実践の取組みや、小規模校の学校現場からでないと気づくことができない美術科の諸問題―とくに授業を実施する教室に関する問題提起、また廃校を活用し、北海道という風土に根ざした教科を跨いだ木育イベントの実践的考察など、気鋭の現職教員による興味深い発表が続いた。
 休憩を挟んで後半には、青森の伝統文化―弘前ねぷたと青森ねぶたについて、それぞれ専門に関わる立場から目下の取組みや、現状に対する新たな提案などが披露される。いずれもねぷた・ねぶたの造形について理論的考察を継続している貴重な発表である。さらに、弘前で独自に企画・開催している、現代美術と市内の歴史的な文化財をコラボさせた展覧会「ひろさき美術館」の紹介があり、最後には、岩手県立博物館で3.11の被災資料を手がけている処理作業の現場と、今後の課題に関する得難い発表があった。
 最新の教育課題や、様々な学校現場を経験しないと見出せない問題提起、風土に根ざした活動、地域の伝統文化の継承に関わる発表、地元で芸術の活性化に取り組む様子、そして今も尚、3.11の被害に地道に対応している美術館の実態―これまで例のない、海水にまみれた塩分を除去するための技術開発に従事する姿―など、内容は多岐にわたるが、いずれも地域の状況・実態を踏まえた充実した内容である。こうした考察を同じ空間で共有できたことに、相互交流の場の必要性を感じ、改めて本学会の主旨と意義について再認識させられた。口頭発表者並びにご参加下さった皆様に改めて感謝申し上げたい。
 平成29年に公示された新学習指導要領(中学校美術)は、その目標に「生活や社会の中の美術や美術文化と豊かに関わる資質・能力」を掲げている。図工・美術教育が芸術文化というフィールドの中で、考察されることの意味も大きいのではないだろうか。

 尚、2日目は遠方からの会員とともに、短い時間であったが弘前市内を散策した。弘前例会ということもあり、その訪れた場所を少し紹介したい。
 最初に「津軽藩ねぷた村」。そこは観光施設で、高さ10mの最大の扇ねぷたが展示されている。また弘前地域の伝統工芸を実際に作って見せるコーナーがあり、ショッピングも可能だ。
 次に、長勝寺のある茂森町から新寺町の通りを巡った。この一帯には名前の通り、お寺が建ち並んでいる。黒門の左手には八角形の東北では2つだけと言われる栄螺(さざえ)堂、そしてまっすぐ600m先には津軽家の菩提寺である長勝寺。三門(国指定重要文化財)がそびえ立ち、その中をくぐり抜けて左手の蒼龍屈(そうりゅうくつ)へ。三尊仏と厨子堂があり、しばし足を止めて五百羅漢に見入った。
 続く新寺町の通りには、両脇に24のお寺が建ち並ぶ。立派な寺院の中に混じって一角には、庶民的な「身代り地蔵尊」もある。凛としたお姿の中にもそのお顔は何とも柔和で愛らしい。そこからすぐの寺へ。境内に足を踏み入れると、雪よけのための赤い帽子をかぶったお地蔵さんがすぐ目に入った。袋宮(たいぐう)寺は外からでは分からないほどの古くこぢんまりとした外観であるが、中に入ると、6mほどの県下最大級の木造仏、十一面観音像を拝することができる。その建物とのギャップにいつも驚かされるのであるが、威厳のあるお姿に行く度に圧倒される。真向かいには稲荷神社。その先にあるのが最勝院で、東北でも一番の美塔と称される五重塔(国指定重要文化財)があり、弘前のランドマークともなっている。
 長勝寺・三十三ヶ寺を含めると、この一帯には60近い神社仏閣が集まっている。今回は短時間で1km程二つの通りを散策しただけであるが、城下町弘前の歴史を感じ取れる場所である。次回は、また違った視点から弘前を紹介できればと思う。



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