東北芸術文化学会

お問合せ|ホーム

第72回長崎研究例会を振り返って:エクスカーションの紹介


第72回長崎研究例会を振り返って:エクスカーションの紹介


東北芸術文化学会 会長 蝦名敦子 氏


 第72回研究例会が、津田礼子会員のお計らいで、今回、長崎市の活水女子大学で開催されました。九州地区の会員でおられる方々に発表の機会が得られたことになります。活水女子大学は、港を一望するおらんだ坂の上に位置し、大変趣のある建物です。本例会はその校舎の一室で6件の口頭発表が行われました。加えて、江崎麻紀会員から、休憩時に大変珍しい月琴演奏を、美しい歌声とともにご披露頂きました。また、広島芸術文化学会の関村誠氏がご発表下さり、研究例会を盛り上げて下さいました。改めて感謝申し上げます。発表終了後には、学内に設置されているミニチャペルも見学させて頂きました。
 翌日にはエクスカーションが準備されており、希望者での参加でしたが、なかなか個人では足を運ぶことができない外海(そとめ)地区に遠出いたしました。そこは、キリスト教が禁じられる中で育まれた、日本独自の信仰のかたちを物語る貴重な遺産です。フランス人ド・ロ神父によって建てられたカトリック教の出津(しつ)教会を訪れましたが、海からの強風を意識して低い屋根にされたと言われ、今も地域住民に守られながら信仰が継承されています。また、国指定重要文化財で、同じくド・ロ神父によって設立された授産活動の場所−旧出津救助院を見学しました。地元の自然石を不規則に積み重ねた丈夫な「ド・ロ塀」が、城の石垣のようにも見えました。
すぐ近くには遠藤周作文学館があります。外海は彼の代表作と言える『沈黙』の舞台。その文学館のテラスから一望できた碧い海に、聞いたばかりのド・ロ神父が二度と戻ることがなかったフランスをその先に見つめていたこと、そして、異国の地に入ったキリスト教や新しい文化が、共生するに至るまでの苦難にしばし思いを馳せることができました。江戸時代に一早く洋風文化が入ってきた長崎。一方で、「長崎は負の遺産もあるんですよ」と、地元の方ならではのご説明を伺い、その土地が刻む文化伝承のありように直に触れられた気がいたしました。またとない貴重な一時でした。
 今回の長崎例会は、東北のみならず、それぞれの地域文化を見据えようとする本学会にとりましても、大変有意義な研究例会でした。様々な地域文化を見聞することで、東北の芸術文化を相対化して考える視点は、これからの益々のグローバル社会において重要なことではないでしょうか。また、他の学会員との交流を進めていくことも、本学会の活性化に繋がる有意義なことであろうと思います。いろいろとご準備、ご配慮頂きました津田会員にこの場をお借りして心から感謝申し上げます。



72-nagasaki-ebina-01


72-nagasaki-ebina-02




▲ページトップへ

お問合せ|ホーム