東北芸術文化学会

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「生きる力を育てる」


「生きる力を育てる」


高柳智子



 〜子育てをしていると、必ずと言っていいほど訪れる「なんで?」「どうして?」の質問攻めの時期。この時期をどうとらえ、どう過ごすのか。〜

教育は、上からの押し付けではうまくいかない。 大事なのは「動機づけ」そして「発見的に教えること」である。 上記は、筆者が教育大学時代に一番心に残った教えだった。

3歳前後の「何故、どうして期」は、こうしたことがお膳立てせずにできる、もってこいの時期なのだ。 まだわからないからとお茶を濁し、適当に答えることは、せっかくの「生きる力」を育成できる機会を逃していると筆者は考える。

質問を受け入れることで、まず自分自身を受け入れられているという、自己肯定感を育てることができる。 また、質問に対して答えようとする親の姿勢や、わからない時には調べて教えたりする後姿を見せることで、将来的にわからないことは自分で調べるといったことも厭わない感覚を養えたり、世の中にあらゆるものに興味を持つきっかけともなり得る。 更に、色々なことを知っている親や大人に尊敬の念を持ち、自分も将来そういった大人になろうといった意欲を持たせることもできる。

質問をはぐらかされている子は、質問をしなくなる。 そういった疑問は生きるのに不要なことと無意識のうちに判断され、当面自分に必要なこと以外に興味を持たなくなるだろう。 将来的には、想定外の事柄が起きたとき等に対処する、といった能力に乏しい大人になる可能性があると考える。

何かを外に出す、表現というものはすべからく生きる力になると筆者は考えている。 造形的なものしかり、文章的なものしかり、また質問でさえ、自分の中にもやもやしているものを外に出す、その結果「そうか!」といった発見のようなものを自分の中に、無意識的にでも見つけ、自分自身をフィードバックすることが、自己統一を生み、自分自身の生きる強さに還元されるのである。

大人でも、自分の中の疑問が解決した時に爽快感を感じることは往々にしてあるだろう。 その時、得た知識以上に、脳が活性化して元気になっているような感じがすることも心当たりがあるかと思う。 そういったことを体験することが、生きる力を育てることに繋がっていくと考える。

少々面倒と思ってしまうかもしれないこの時期こそ、意識的に、大事に、子供を受け止めてあげようではないか。 期待するわけではないが、きっと、見返りは大きいだろう。

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