東北芸術文化学会

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蝦名敦子 展覧会紹介

 


テマヒマ展<東北の食と住>を見て

 

蝦名敦子

 

 2012427日から826日まで、東京ミッドタウン・ガーデン内の21_21 DESIGN SIGHTの会場で、テマヒマ展が開催された。東北のものづくりに焦点を当て、東北の文化や精神を背景に生まれた「食と住」に目が向けられた展覧会である。展示はドキュメンタリーの映像と、様々な<もの>の展示と、大きく二つから構成された。芸術作品が展示された一般の展覧会とは違って、今までにない展示方法に特に興味をそそられた。

 それは、どんな小さなものでも一つ一つが、整然と並べられた展示方法にある。パンフレットにもあるように、作られた食品や、製造されたもの―ハサミや箸の一つ一つが、丁寧に等間隔で並べられた。あめ玉や干し餅、煮干し、かご、お椀、ゴム長靴・・・と、食品から生活用品まで全てそのようにである。どんなに小さなものでも、また一見、同じように見えるものでも、手で作られたものは微妙に異なり、全く同じということはない。それらの表情が、全て違う顔を持つように大事に扱われ、きちんと並べて展示された。つい触ってみたくなるのであるが、芸術作品と同じように触ることはできない。この普段なにげなく手にしたり、味わっている食品や生活用品に、一定の距離感を保ちながら、本展覧会では向き合うことになる。この整然と並べるというこの展示方法の威力に、改めて感動させられた。

それと対をなしていたのが、入るとすぐに目にするドキュメンタリーの映像である。東北6県からそれぞれ選ばれたが、必ず製造した人の手が画面に大きく映し出された。そして、作る人の作業姿や、生み出される工房・仕事場などと、その生産される場所の佇む風景が記録された。仕事に関わる音も映像とともに流れ、また様々な音楽とのコラボで独特のリズム感を醸し出している。生産者にしてみると毎日繰り返される同じ作業や、何気ない光景であっても、日常でありながらそれとは全く異なる魅力が存分にカメラに捉えられ、最後まで見入ってしまった。

展覧会のタイトルにあるように、手間、暇(時間)をかけて作られている東北の生産物の一つ一つが、普段こんなに注目されるだろうか、というくらいに脚光を浴びている。会場には日本人だけではなく、外国人がとても多かった。おもしろい展示である。

 


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